『 天網恢恢疎にして漏らさず VOL168 』 四月のコラム 上へ
「天網恢恢疎にして漏らさず」(てんもうかいかいそにしてもらさず)老子の有名な言葉。天の張る網は、広くて一見目が粗いように見えるが、悪事を網の目から漏らすことはない。悪い事を行えば、天罰を被ることになる。
一旦収束したかに見えた森友学園問題が思わぬ形で再熱している。「安倍晋三首相が小学校建設に特別な便宜を図ったのではないか」という疑惑は改ざん前の文書が明らかになったことで、皮肉にもその関係性が希薄だったことが証明された。当初、朝日新聞が報じた時点では「書き換え」だったが、3月10日頃から「改ざん」という表現に変わった。
前国税庁長官の佐川宣寿氏。昨年財務省理財局長だったときに「森友側と価格交渉はなかった」「関係文書は破棄した」などと語った国会答弁との辻褄合わせのために、理財局と近畿財務局が組織的に文書を書き換えたとみるのが妥当だろう。この答弁もかなり無理があり、おかしい。普通に考えて交渉経過の文書は保管して然るべきだし、破棄したなんてことはある筈がない。「ひとつのウソは次のウソを生む」というが、正にウソの連鎖である。
改ざん前の文書にある総理夫人の明恵氏の発言。森友学園の籠池泰典理事長に対して「いい土地ですから、前に進めて下さい」という発言は近畿財務局の担当者が籠池氏から聞いたのであって、総理は「妻はそういうことは言っていない」という。明恵氏の発言を受けて、近畿財務局が付度して、ごみの処分費を見積り、土地を籠池氏側の思惑に沿うように条件や価格を操作したのではないかとみる。官僚の人事権が政治家にあるのか、人事に対して政治家の影響力が大きく作用するのか不明だが、いずれにせよ官僚は国民ではなく、上をみて仕事をしているとこだ。
今回の公文書改ざん。一官僚によって国の命運が左右される可能性を示唆したという実に恐ろしい問題を含んでいる。万一政治家が絡んでいるとしても同じことだが、政治家は選挙の洗礼を受ける。官僚はヘマをしなければ国を動かせる程の力をもつということだ。
誰かが朝日新聞にリークして発覚した今回の件。すっぱ抜きがなかったら、この改ざんは日の目をみることはなく葬られて、忘れ去れ、官僚の膿はそのままになっていた。財務省だけではないのではないか。他の省庁でもあるとみておかしくはない。
「天網恢恢疎にして漏らさず」紀元前のこの言葉がピッタリの今回の改ざん劇。いつの世も人間界はかわらないのかもしれない。残念であるが。 |